料理をつくってもらうことのありがたさ

自分は食べることが好きなんです。大学のときにアルバイトをしていた定食屋で、親父さんがいつも、まかないを出してくれていました。一人暮らしをしていると、人がつくるものを食べることがないだろうからって。人に料理をつくってもらうことのありがたさを感じましたね。それが今、料理を仕事にしていることの原点にあるかもしれません。

黒川温泉は叔母が女将をやっていることもあって、忙しい時期に手伝いにきていました。最初は旅館で働くことを考えていなかったんですけど、料理ができる環境がよくて、ここで働いてみようと思って。やっぱり食材がいいし、水がぜんぜん違います。おいしいんですよ。この環境で料理ができるのは贅沢なことだと思っています。

畑との距離が近い料理

野菜も切り方ひとつでかっこよく見えたり、不格好に見えたりするんですよね。旅館の料理も和食のことも、一から覚えたので最初はやっぱり大変でした。うちの旅館はなるべく地域のものを使って、全部手づくりしているので時間も手間もかかります。

3年ほど前から、野菜は自分の弟が近くの畑で、なるべく農薬を使わずに育てているものを使っています。大切にしているのは彩りと、まるごと。できるだけ野菜の形がわかる状態で食べていただけるように、子カブだったり脇芽の出るものだったり、小さくてもおいしい野菜をつくってもらうようにしています。僕も毎日畑に行けるわけではないので、今がおいしいっていう状態を弟が見てくれているのは心強いですよね。弟からは、食べられるところはなるべく全部使ってほしいと言われているので、いつも試行錯誤しています。

枠にとらわれずに考える

うちの料理は、畑の野菜が季節を決めていく感じがあります。秋でもおいしいきゅうりが獲れたら、少し夏っぽいかもしれないけれどきゅうりを使ってみたり。そのときにおいしいもの、畑からつながっているものを食べていただける料理なんです。せっかく畑があるので、お客さんと一緒に収穫してバーベキューするのもいいですよね。

旅館の料理は前菜から始まって、お刺身のあとにメインの揚げ物や焼き物が出てくるという、枠みたいなものが決まっているんです。お刺身は阿蘇で育てられている紅鱒を使っているんですが、それを獲れたての野菜とサラダにして食べるのもおいしいと思うんですよね。枠にとらわれず、おいしい時間を過ごしていただける料理をつくりたいと思っています。

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皆様にお会いできることを、心より楽しみにしています。