入湯手形ができるまで17の工程
2020.11.25 / 地域プロジェクト
【手形】
黒川温泉には、加盟旅館にある 28ヵ所の露天風呂の中から、お好きな露天風呂を 3ヵ所選んでご入浴いただける「入湯手形」という仕組みがあります。
1980年代後半ごろ、黒川温泉は『露天風呂を集めた温泉街』をテーマに、共に助け合い、皆で全体の景観づくりに取り組んでいました。
そのような中、露天風呂が作れない2軒の宿を救うため誕生したのが「入湯手形」です。露天風呂が無い旅館に泊まってもこの手形があれば、他の旅館で露天風呂に入れます。
”一軒で儲かるのではなく、地域全体で黒川温泉郷を盛り上げたい”との思いから生まれたこの仕組みは、多くのメディアに取り上げられ、黒川温泉は名実ともに全国区の人気となりました。
この度、11月25日の次世代リーダー育成プログラム「第4回 黒川塾」では、”かける木工舍・南小国町地域おこし協力隊”の當坊こず枝さんを講師としてお迎えし、30数年間入湯手形を作り続けている河津開発の工房視察及び檜林の見学にいきました。
*かける木工舍 https://kakerumokkosha.com
まずは、檜林の伐採現場に立ち入り、河津さんから杉檜林の現状についてお話をお聞きしました。その後、河津さんの工房へお邪魔して、木の幹が丸型の形手形状になるまでを見て学びました。
工程はこの通りです。
”河津開発”
山を見る→木を選ぶ→木を切る→葉枯らし→運搬→煮る→皮を剥ぐ→節を切る→磨く→乾燥→輪切り→面を磨く→穴を開ける
形を整えた後は 黒川地区の老人会”三養会”にお仕事をお願いします。
”三養会”(黒川地区の老人会)
面に焼印(スタンプ)押す→穴に紐通し→裏面シール貼り→10個束ねる→納品
入湯手形は、よくある薄く丸型の形状なので簡単に量産できるのではと想像していましたが、完成するまでには多くの人の手による行程があることが理解しました。
また、手形の形状は乾燥するとひび割れしやすいという特徴があります。しかし河津さんの作る手形はほとんど割れません。それは独自の温湿度管理の賜物です。現在そのような知見と技術を継承するために講師の當坊さんを中心にしたキマモリプロジェクトが進んでいます。
また、お客様に手形を使って温泉をご利用いただくことは、間伐材が貨幣に還元されることにつながり、杉檜林の健全な管理のための一助になっています。
”山を守り、技術をつなぎ、地域が潤う”
入湯手形がそうした役割を果たせるように継承していきたいと考えます。