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黒川温泉採用情報

2023.02.26

黒川環境部 研修「植彌加藤造園」(22年10月)

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(昨年22年10月に実施した研修のご報告です)

京都は、紅葉がまだ始まるかどうかの10月中旬。黒川温泉旅館組合環境部は、雑木の研修に足を運んだ。

雑木を植え、自然と調和した景観を作ってきた歴史は、黒川温泉が黒川温泉たる誇り高き伝統の一つだと思っている。

しかしながら、今、現状として黒川温泉が抱えている課題としては、20年前に植えた雑木が年月を経過し成長しすぎているということだ。昨今は毎年のように起こる豪雨などの天災に肝を冷やすことがあった。

我々は自然の恩恵を受け、自然と共に生きてきたからこそ、自然と共生していくという課題からは逃れることができない。そして日々メンテナンスを行ってきた雑木たちの成長は、我々ができる作業の域を超えつつある。

だからといって、先代たちが代々美しき景観を作り守ってきたからこその価値であり、すべてを伐採して作り変えるといった手法をとりたいとも思わない。

 

環境部として研修に行くこと自体が、久方ぶりである。研修先は「植彌加藤造園様、江戸時代の嘉永元年(1848年)の創業以来、京都で造園業を営んでいる伝統ある会社だ。一体どんな手法で京都は景観維持をしているのか、発見や学びがあればと胸を弾ませ研修に向かった。

 

【座学にて】

座学が始まり、まず、驚かされたことは、我々黒川温泉のことを研究していただいた上に、我々が抱えている課題に則した形で、すでにカスタマイズされた資料がでてきたことである。

そしていろいろなヒントを得た

〇防災と景観の両方の側面から観察すること
〇スケールギャップへの対処
〇残したい景色と思いの継承
〇植彌加藤造園における雑木管理の手法例(「枝抜き」「伐採(選択除伐)」「萌芽更新」など)

座学の中で多くの知見を頂いた。その中でなによりも驚いたことは、語弊を恐れずにいうならば、「決まった手法はない」という点である。

それを耳にした際に、正直軽い落胆を感じたのだが、それは杞憂であった。

 

【京都清水寺にて】

京都といえばの名所である清水寺、年間約400万人以上がお参りに訪れるという誰もが知る寺院である。10月中旬、紅葉はまだ始まる前にも関わらず、修学旅行生を始め、国内外問わず、多くの参拝者が境内から見える景色を楽しみ写真に納めていた。「清水の舞台から飛び降りる」という言葉が残る通り、本堂から東山山頂へと延びる斜面は傾斜が高く、その高低差がまた山林と建物とマッチした美しい景観を作っている。

清水寺のご住職の方々は、境内や周辺の緑地全体について「防災」と「景観」にとても配慮なさっていると聞いた。その両側面を注意深く観察しながら、剪定する樹木ないしは枝を選び、実際に作業する様子を見せていただいた。

私たちは剪定の研修ということで来ているので、私は各々の枝の落とし方や伐採方法等に目が行ってしまったのだが、大多数の参拝者はそうではない。樹木単体ではなく、建造物(子安の塔や本堂など)や山林全体を見ている。我々とて、一参拝者として来ていたのならば同様だったろう。

私たちも清水寺のように、もっと大きな範囲で物事を考え、どの視点場(どこ)からどの視点対象(なに)を見せたいのかをしっかり考えていかなくてはならないと感じさせられた。

 

【無鄰菴にて】

昼食後、希望者だけで無鄰菴での研修を引き続き行った。無論、全員が参加をした。清水寺での山林から考える景色の在り方から一転し、今度は雑木の庭というもっとコンパクトな世界観での見方を学んだ。

無鄰菴の歴史は山形有朋公の別邸であり国指定の名勝の一つである。それ故に、基本的に伐採などといった大きな剪定はしてはならず、やむを得ない場合は行政機関の許可が必要とのことだった。

そんな管理に大きな制約があるなか、無鄰菴は見事な庭が現在まで維持をされていた。

庭という有限な広さの中で、壁となってくるのは木々の成長による「スケールギャップ」である。樹木たちは、一年たりとて前年と同じままでの姿を見せてはくれない。当たり前に成長していく雑木は、樹木の種類によってもその早さが異なる。そこに発生するスケールギャップとの対処と工夫は壮絶なものであったと想像に難くない。

そうした課題に対する、枝抜き(太い枝を根元近くで切ること)や萌芽更新(大きく成長した樹木を伐採し、切り株から新芽を吹かせて育てなおすこと)など、いろいろなテクニックとその工夫の痕跡を見せていただき、改めて感動した。

無鄰菴から東山へと視線がのびる先にある木々を約9年前に剪定したそうだ。無鄰菴から望むという点一つ取っても簡単ではない。2階建の建物の一階から望むのか、2階から望むのか、その視点場という一つの要因だけでも無鄰菴が有りたい雑木の高さは変わってくる。

そして植彌加藤造園社長が一番多く語られていたことは、無鄰菴の歴史と山形有朋公の当時の想いである。

おそらく、多くはないであろう歴史資料の中から、有朋公が当時気に入ったであろう、もしくは嫌いであったであろう景色や考え、時代背景までをも紐解き、その想いを制約がある中で維持し続ける。

これは一朝一夕の勉強や観察、そして苦悩では決して維持はできないであろう。勉強して体現し、それを継承していることに感服と畏敬の念を覚えた。

 

【植彌加藤造園様の研修を通して】

一日という短い時間ではあったが、こんなに充実した学びは久方ぶりであった。研修が終わった後も、お酒を酌み交わしながら談議に花を咲かせた。

私感ではあるが、植彌加藤造園様に対し感じたことを記し締めたいと思う。

研修の間、社長の他に5名の方が同行していただいた。暦年の職人さん達かと思いきや、若いメンバーが多く、座学でお話いただいた方(本田様:女性)は入社2年目だという。そのことにも驚愕したのだが、一人一人の社員の姿勢に感銘を受けた。

社長が語る言葉を、一生懸命に聞き、映像に残し、継承し、受け継いでいこうとする姿は、植彌加藤造園様が歴史ある造園業であり、これからも繁栄たりうる理由であると感じた。

歴史がある中でも、挑戦し、それを共有、勉強し、継承していこうという姿勢は、分かっていてもなかなか出来る事ではない。それは、もしかしたら一度は黒川温泉にもあったはずだが、今の黒川温泉で薄れてきているものなのかもしれない。

「決まった手法はない」のであれば、私たち一人一人が勉強し、共有することで黒川温泉式の確立した世界観を創り上げていく余地がまだあるということはないであろうか。

社長と一人一人の社員の姿に、植彌加藤造園様の明るい未来とこれからを感じた。

 

(環境部長 小林慎太郎)

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皆様にお会いできることを、心より楽しみにしています。